住宅購入にはシミュレーションは不可欠
前回の持ち家と賃貸、経済的にはどちらが得か?という記事で賃貸と持ち家どちらがよいかについて帰属家賃や収益還元法を用いた考え方について説明しましたが、ここでは、私が実際に家を購入するときに行ったシミュレーションを公開します。
といっても、初めての住宅購入ですので、試算が甘い部分もあるかと思います。考え方の参考にしていただければ、と思います。
まず、私の考え方として、賃貸にする場合も、購入する場合も、住宅の購入は経済活動として捉えています。ということは、比較対象は投資行為となります。
つまり、購入と賃貸を比較するというよりは、購入と賃貸と株式運用を比較しているということです。
その前提で、ここからの資産を見ていただければと思います。
まず、試算の前提となる家賃と購入金額ですが、ここでは下記の前提としています。
- 家賃:月13万円
- 購入金額:3000万円
- ローンする場合は頭金なし、フルローン
※実際は3000万円ではなく、2600万円で購入したのですが、この資産をしたときは3000万円で計算しており、説明上もそのほうがわかりやすいのでそれで説明します。
ケースA:ずっと賃貸
ここでは、35年間ずっと賃貸をしていた場合の35年後に残っている金額について試算します。
まず、今3000万円持っているとします。
私は実際に現金3000万円持っていたので、ローンせずに3000万円を運用に回しながら、家賃を払い続けた場合の試算をしています。
家賃は5700万円とありますが、これは35年分の家賃で、下記の計算です。
月35万✕35年+更新料13万✕18回=5700万
横軸の年率0%, 2%, 4%というのは運用利回りを示しています。ここでは、72の法則を使って計算しています。72の法則というのは、72を利回りで割ると、資産が倍になるのに必要な年数がわかるというものです。
例えば、2%で運用したとすると、72÷2=36なので、36年後に倍になります。
4%だと、72÷4=18なので、18年で倍、その後の18年でさらに倍、すなわち4倍になる計算です。
なお、ここでは35年と書いてありますが、利回りの計算では実際は36年です。すみません。
これを比較すると何がわかるかというと、今手元にある3000万円を2%で運用し続けると、35年後には家賃を払っても手元に300万円残るということです。4%なら6300万円です。一方で、銀行預金のように利率が0%だと、マイナス2700万円です。
つまり、何が言いたいかというと、3000万円を2%以上の利回りで運用していれば、それで家賃がまかなえる、ということです。
区分 | 費目 | 今 | 35年後 | ||
年率0% | 年率2% | 年率4% | |||
資産 | 現金 | 3000 | 3000 | 6000 | 12000 |
負債 | 家賃 | 5700 | 5700 | 5700 | |
収支 | -2700 | +300 | +6300 |
ケースB:購入・ローンする
次に、住宅をローンで購入する場合の試算です。
ここでは、3000万円をフルローンしたとします。なぜフルローンかというと、3000万円で家を買ってしまうと、その3000万円を株式運用に回せなくなってしまうからです。株式運用の資産を減らしたくないので、住宅ローンを利用することにします。(実際私が借りたときは、残念ながらフルローンにはできず、やむなく頭金500万円入れましたが、本当はフルローンにしたかったです。)
この表ですが、見方はケースAと同じですが、費目が増えています。
まず、資産ですが、現金の運用益のほかに、売却金額が1500万円あります。これは、築40年のマンションを3000万円で買ったとして、35年度、すなわち築75年のときには、1500万円くらいであれば売れるだろう、という試算です。が、これは全くどうなるか不明で、その前に建替えになるかもしれないし、廃墟になるリスクもあります。立地は良いので価値はゼロにはならないだろう、ということで、控えめに見て半額としています。
次に、住宅ローン減税ですが、これも200万円を見越しています。(が、実際は築年数が古すぎて住宅ローン減税使えませんでした。)
次に、負債です。まず、住宅ローンですが、3000万円借りて、35年ローンでトータルの支払いが3600万円という計算です。これはローンシミュレーションのサイトで行いました。利率は確か1%にしていたかと思います。
次に、購入費諸経費です。これは仲介手数料、登記手数料、その他で250万円を見込んでいます。(実際はこれより安いはずです。私の場合はインスペクションなどをしていたので、少し多めに見込んでいました。)
次に、管理費・修繕積立金です。これは月3万✕35年という計算です。
固定資産税は年18万円✕35年という計算です。(が、実際は年10万円未満でした。)
リフォーム代はフルスケルトンのリノベーションを1回と、お風呂やキッチンといった内装のリフォームを何度か実施する想定で2000万円としました。(一度プロの方に試算を見せたことがあるのですが、ここはちょっとかけ過ぎではないか、と言われました。)
保険は年3万✕35年という計算です。(実際はもっと安い最低限のものにしています。)
最後の大規模修繕拠出金ですが、これはマンションの大規模修繕時に修繕積立金が不足した場合に各戸から徴収する追加金額があるのではないか、と考え含めました。(実際は管理インスペクションで黒字とわかったので杞憂でした。)
この結果、収支としては、ケースAのずっと賃貸とほぼ同じ結果になりました。
つまり、この条件で比較した場合、ずっと賃貸でも購入しても経済的な損得はほぼない、ということになります。
区分 | 費目 | 今 | 35年後 | ||
年率0% | 年率2% | 年率4% | |||
資産 | 現金 | 3000 | 3000 | 6000 | 12000 |
売却金額 | 1500 | ||||
住宅ローン減税 | 200 | ||||
負債 | 住宅ローン | 3600 | 7500 | ||
購入時諸経費 | 250 | ||||
管理費・修繕積立金 | 924 | ||||
固定資産税 | 420 | ||||
リフォーム代 | 2000 | ||||
保険 | 105 | ||||
大規模修繕拠出金 | 200 | ||||
収支 | -2800 | +200 | +6200 |
ケースC:購入・ローンしない
次の試算は、ケースBの購入で、ローンを利用しない場合です。私は最初からローンをすることを考えていたのですが、念のためローンを使わない場合も試算してみました。
先程のケースBとの違いは下記です。
- 手元の3000万円を使って住宅購入したため、3000万円は株式運用には回さない。このため、横軸の運用利回りは関係しない。
- 住宅ローンをしていないため、住宅ローン控除がない
- 住宅ローンをしていないため、住宅ローンの支払がない
これ以外の条件は先程のケースBと同じです。
この結果を見ると、35年後の収支はマイナス2800万円となっています。
ここからわかるのは、手元に株式運用に回せる資金がある場合、その資金で住宅を買うのは損、住宅ローンを利用したほうが良いってことです。
前回の記事で住宅ローンの本質はレバレッジ投資と書きましたが、まさにそのとおりで、住宅ローンを使わないとレバレッジ投資できず、資産を縮小することになるので、このような結果となります。
また、この考え方を応用すると、住宅ローンの繰り上げ返済についても、やらないほうが良い、ということがわかります。よく繰り上げ返済を勧める人で、繰り上げ返済をすることで支払額が減る、といいますが、それ以上に運用したときの利益が減るので、トータルではマイナスです。比較対象が銀行預金になっていることが致命的な間違いです。正直、繰り上げ返済を勧める人は投資能力に欠ける情弱ではないか、とすら考えています。
区分 | 費目 | 今 | 35年後 | ||
年率0% | 年率2% | 年率4% | |||
資産 | 現金 | 3000 | 0 | 0 | 0 |
売却金額 | 1500 | ||||
負債 | 購入時諸経費 | 250 | 3800 | ||
管理費・修繕積立金 | 924 | ||||
固定資産税 | 420 | ||||
リフォーム代 | 2000 | ||||
保険 | 105 | ||||
大規模修繕拠出金 | 200 | ||||
収支 | -2800 |
その他のケースも試算しています
表を用いての説明は以上の3ケースとしてますが、それ以外の試算もしています。
それ以外にしたのは、下記の2ケースです。
- ケースD:ずっと賃貸、途中借り換え
- このケースでは、娘が中学生になったら月13万円の部屋から月16万円の部屋に引っ越して、娘が結婚したらまた月13万円の部屋にさらに引っ越すということにしました。
- ケースE:購入・ローンするが、築年数が浅い物件にする。
- もとのケースでは築40年の物件にしていますが、それだと売却金額も安くなるし、途中でリフォーム費もかさむので、もう少し築浅の物件、築15年の物件を4500万円で買って築50年で2500万円で売る。その間のリフォーム代は750万とする、という試算としました。
こういった資産をした上で、購入しても経済的に損にはならない、という判断で購入に踏み切っています。
この資産は両学長の動画にも通ずる
最近みた両学長の動画で、真の家賃計算法という動画にも通ずるものがあります。私がこの動画を見たのは購入したあとのことですが、同じような考え方だな、と思いました。
ただ、私のほうが運用を考えていたり、支出を大目に見こんでいたりと違いはありますが、考え方は同じです。
まとめ
上記をまとめると、このようなことが言えます。
- 住宅を購入するか、賃貸にするかを判断する際は、必ずシミュレーションをすべき。
- 株式運用に回せる手元資金がある人は、これを住宅購入に宛ててはいけない。住宅ローンを活用すべし。
- 住宅ローンの繰り上げ返済はすべきではない。繰り上げ返済する資金があるなら、株式運用に回したほうが良い。
これは私の考え方で、人によっては別の考えを持っているかもしれません。
ただ、経済的に考えると、こうだろうと思っていますし、参考になれば幸いです。